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第11話  

松山昌平の真剣な眼差しと強い意志を感じ取ると、篠田初は手に握った検査結果を見つめ、心の奥底で少し揺らいだ。

 一方、小林柔子は何かを察したかのように、すぐに二人の間に割り込み、自分の検査結果を取り出して篠田初に見せた。

 「初さん、見てください。私の赤ちゃん、もう三ヶ月です。ついさっき、四次元カラードプラ超音波検査を受けてきたばかりで、もう形ができていますよ。これがその写真です。ねぇ、見てください。可愛いでしょう!」

 「今日は久しぶりにお会いしたので、どうしてもあなたに感謝の気持ちを伝えたくて。あなたの寛大なおかげで、赤ちゃんは完璧な家族を持つことができましたし、昌平のような素晴らしい父親も得ることができました!」

 これは明らかに自慢しているではないか!

 篠田初は小林柔子が差し出した四次元カラードプラ超音波の写真に一瞥をくれた。

 確かに、もう形の整った赤ちゃんで、手足や顔立ちもしっかりしていた。

 それに対して、自分の子供はまだただの胚芽であり、厳密に言えば、まだ命と呼べるものではなかった。

 この差は、まるで無言の嘲笑のようだった。

 彼女とその子供が、松山昌平にとってどれほど余計な存在であるかを嘲笑っているかのようだった。

 篠田初が黙っているのを見て、小林柔子は彼女を見下すかのように、さらに調子に乗って話し続けた。「初さん、赤ちゃんにとって、あなたは大恩人です。そうだ、あなたがこの子の名前を決めてくれたらどうでしょうか?一生感謝の気持ちを込めて、あなたが付けた名前を使います!」

 篠田初は初めて、小林柔子を叩きのめしたいという衝動に駆られた。

 冗談じゃないわ!

 彼女を裏切ったうえに、その子どもの名前を彼女に付けさせるなんて、まるで刃を突き刺して、さらに傷口を広げるようなものだった!

 篠田初は冷笑を浮かべ、道化を見るような目で小林柔子を軽蔑しながら見つめた。「本当に私に名前を付けさせる気?」

 「もちろんです、初さんがよろしければ」

 小林柔子は謙虚な振りをしながら、実際には篠田初が松山昌平の前で恥をかくことを狙っていた。

 彼女は篠田初が名前を付けることは絶対にないと踏んでいたのだった。

 どんなに寛大で耐える力のある女性でも、自分の夫と愛人の子供に名前を付けるなんてことは、到底できるはずがなかった。

 松山昌平は眉をひそめ、複雑な表情で篠田初を見つめ、低い声で言った。「もし無理なら断ってもいい」

 離婚が確定している状況にもかかわらず、彼女のこんなに辛そうな姿を見ていると、不思議と彼女を守りたいという感情が湧いてきた。

 しかし、現実は彼の予想を裏切るものだった。

 「無理じゃないわ、名前を付けるなんて簡単なことよ」

 篠田初は少しも恥ずかしさや緊張を感じていないかのように、眉を上げて楽しそうに答えた。「じゃあ、松山拾にしましょう!」

 「松山、松山修?」

 小林柔子は篠田初が本当に名前を付けたことに驚き、表情が一瞬崩れた。試しに尋ねてみた。「修業の修ですか」

 「いいえ、違うわ。拾は拾うという意味よ。誰かが捨てた不要なゴミを拾うという意味ね。ほら、韻を踏んでいて、ぴったりでしょ」

 篠田初の言葉に、小林柔子の顔色はみるみる悪くなった。

 怒りを爆発させたかったが、松山昌平が目の前にいるため、頬を強く噛みしめ、内心で抑え込むしかなかった。

 篠田初は続けた。「小林さんがこんなに熱心に名前を付けさせてくれたんだから、ちゃんと使ってね。もし使わなかったら、あなたが嘘をついて、ただの見せかけだと私は思うわよ!」

 松山昌平は顔を険しくして、冷たく篠田初を見つめた。「もういい、いい加減にしろ」

 「一体、どっちがいい加減なのかしら?元夫になる松山さんよ!」

 篠田初は松山昌平の迫力ある視線にしっかりと対峙し、さらに付け加えた。「不道徳で恥知らず、婚内不倫をした元夫になる松山さんよ!」

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